第10回日本精神科医学会学術大会

ご挨拶

 さてこの度、第10回日本精神科医学会学術大会を、公益社団法人日本精神科病院協会関東地区が担当し、令和3年9月9日(木)、10日(金)の両日にわたり、パシフィコ横浜で開催する運びとなりました。この1年、新型コロナウィルスの蔓延で、多くの人命が失われました。まずは、ご冥福をお祈り申し上げます。社会の機能が停止し、安倍政権も、トランプ政権もコロナには敵いませんでした。世界中から多くの人が集合する東京オリンピックも、大阪で開催予定だった本学会も中止になりました。せっかく準備をされてこられた近畿地区の準備委員会の皆様は本当に残念だったと思います。今回も、準備段階では蔓延収束の目途は立たず、通年通り、集合して開催するか、WEB開催にするか、大野史郎実行委員長をはじめ、準備委員会の皆様はたいへんなご苦労をされていました。最終的にはハイブリットという形での開催になりましたが、新たな試みですので、無事、成功することを願うのみです。

 今回の新型コロナ感染症で、精神科病院という入院環境が感染には如何に脆弱かということを再認識させられました。閉鎖環境で、衛生管理の苦手な患者さん達の治療を行うことは、三密を避けられません。特に保護室は換気も悪く、多くはマスクをしていただけない患者さんに対応しなければなりません。さらに身体拘束時は頻回の状態観察が必要なうえ、肺塞栓予防のためのケアを行うため濃厚接触となってしまいます。その結果、多くの会員病院、特に精神科救急を懸命にやっていただいている病院でクラスターが発生したように思います。また、クラスターがでると近隣の偏見のため、仕事が終わっても自宅に帰ることができず、病院の駐車場の車の中で夜を明かして、翌日、勤務するといった経験を何週間もされた職員がいらっしゃると伺っています。身体的な疲労はもちろん、ご家族を含めて、精神的な疲労はたいへんなものだったと思います。それでも、精神科病院ならではのチームワークと知恵で乗り越えてこられたと思います。どうか、苦境に立たされた時に、編み出された様々な技を、本学会で共有し、明日の精神科医療に活かしていただければと期待しています。

 今回の学会のテーマは、「令和の多難な時代に求められる精神科医療-希望に応えるために私たちに出来ること-」となっています。厚労省の検討会では、精神科版地域包括ケアシステムを推進し、「かかりつけ精神科医」という概念を言い始めたり、昨年11月には精神科救急についての中間報告を出しています。しかし、各都道府県で受診環境や精神科救急の形もまちまちで、ニーズや規模も異なります。これを一律に、地域包括ケアや診療報酬で取り扱うところに歪があるように思います。本学会は、全国からさまざまな価値観、実績をもった現場の皆様の集会です。たくさんのご発表をいただき、多くの視点を示していただきたいと思います。この学会が今後の精神科医療の向上の新な一歩になることを念願し、挨拶といたします。

第10回日本精神科医学会学術大会
大会長 平川淳一
(医療法人社団光生会平川病院 院長)