GID(性同一性障害)学会 第23回研究大会・総会
関西GIC (gender identity clinic) ネットワーク理事長
康 純
GID(性同一性障害)学会 第23回研究大会・総会を2022年3月12日(土)~13日(日)にWEB開催するにあたりご挨拶させていただきます。
20年以上性別に違和感がある人びとに対応してきた中で、私自身の考え方もずいぶん変化してきました。関わり始めた当初から、性同一性障害という精神疾患の枠組みで捉えることに違和感がありましたが、ジェンダークリニックへの受診者は非常に多く、会社にカミングアウトすると退職せざるを得ないこともあった状況の中で、とにかくガイドラインに沿った対応をこなすだけで精一杯でした。その後、この国では性同一性障害という疾患名が広まっていく中で、少しずつ社会の中で受け入れられるようになってきたと思います。
一方で、欧米を中心として世界的には脱病理化の波が大きくなり、国際的な診断基準であるICDではgender identity disorderからgender incongruenceに名称が変わり、さらには精神疾患から外してConditions related to sexual healthという枠組みに位置づけ、さらにconditionという言葉によって疾患としての位置づけも留保されました。これは多様な性のありようは過去から現在に至るまで、世界中のどの地域でも、人類に共通のものであるという認識に基づいていて、男女を始めとして様々な二元論を止揚するものだと思います。
私は最近、性別に違和感のある子どもたちをサポートしています。思春期前の子どもの性別違和が持続する割合は多くないことが知られています。子どもたちが表現する違和感に対して、どのように対応するのかを家族や学校と相談していく中では、二元論に固執すると対応できなくなってしまいます。学校の中では制服や髪型以外にも男女の区別が常に行われています。これはこの国の社会が規定しているものです。性別に違和感のある子どもたちだけではなく、多様な性のありようを表現する人たちの生きにくさは、その社会が性というものをどのように規定しているのかによって変化すると考えられます。その意味で第23回研究大会のテーマは「性別違和がある人と社会との関係性を考える」としました。
これからどのような社会を作り上げていくのかは、その社会に暮らしていく人びとが決めることだと思います。研究大会では様々な立場から広く議論していただき、実りある大会にしたいと思います。
最後に、今回の学会はNPO法人 関西GIC(gender identity clinic)ネットワークが運営することになっています。理事長の私がご挨拶させていただきましたが、全て関西GICネットワークの理事を始めとする関係者が相談しながら協力しあって運営するという、新しい形の研究大会です。また、社会との関係性を大切にしたいと考えて、広くクラウドファンディングで運営資金を調達します。今秋からGoodMorningというプラットフォームでクラウドファンディング開始予定です。皆様のご理解を賜りますようよろしくお願い致します。