
このたび、第43回日本眼腫瘍学会を大阪市の大阪公立大学において開催させていただく運びとなりました。このような貴重な機会を賜りました日本眼腫瘍学会 理事長 鈴木茂伸先生、ならびに理事の先生方に心より深謝申し上げます。
眼腫瘍は、眼表面から眼内、さらに眼窩に至るまで多彩な部位に発生し、臨床・病理・画像・分子生物学といった幅広い知識と診療経験を要します。特に眼腫瘍手術は眼科におけるあるゆる手術経験の総合力が問われる究極のサブスペシャリティーです。一方で、一般眼科医にとってはまだ馴染みの薄い分野でもあり、全国学会でもやや静かな印象を持たれることがあります。しかし、一例一例を丹念に観察すると、眼腫瘍の病態は極めて多様かつ奥深く、炎症性疾患や変性疾患との鑑別も含め、眼科学の本質に迫る学問領域であると実感します。私は、眼炎症と腫瘍の接点に長年携わるなかで、眼腫瘍学の可能性を強く感じてまいりました。
本学会のテーマは「深は新なり ― 古壺新酒(ここしんしゅ)」といたしました。これは俳人・高浜虚子が好んだ言葉で、古き器(伝統)の中に新しき酒(創造)を入れるという意味を持ちます。たまたま、虚子と田上の家には古くから深いご縁があり、古壺新酒の一扁の扁額が伝えられておりました。本会を開催するにあたり、偶然にもじっくり眺める機会があり、改めてその言わんとすることを感じ入り、今回のテーマとすることに決めました。眼腫瘍学においても、これまで先人が築き上げてきた知の蓄積(古壺)の上に、最新の診断・治療技術や分子病態研究(新酒)を注ぎ、新たな学問の地平を切り拓くことこそ、私たちが進むべき道だと考えています。
本学会は、全国の眼腫瘍を専門・研究対象とする医師・研究者が一堂に会し、経験と知識を共有する「熱く厚い」討論の場です。症例報告から大規模研究、臨床から基礎、そしてAI・画像解析・分子病態といった最新の技術を融合し、まさに「古壺新酒」の精神のもとに、新旧の叡智が交錯する場となることを願っています。
プログラム表紙には、昭和初期のいわゆる大大阪時代の大阪古地図をデザインといたしました。これは歴史上最も活力があった力強き善き大阪の象徴であります。
この地で開催される本学会が、皆様の活発な議論と新たな発想の交差点となり、眼腫瘍学の未来へとつながる契機となることを、主催者として心より願っております。ページトップへ戻る