ピロリ菌は胃がんの主な原因である。主として乳幼児期に家族内で感染し、多くの場合無症状で持続感染し、がん年齢に達した頃から胃がんが発症する。
日本人のピロリ菌感染者の生涯(85歳まで)胃がん罹患率は男性17%、女性8%と算出されている。感染が乳幼児期であること、新たな感染は学童期以降には観察されないことから中学生を対象としてピロリ菌検査を実施することが最適である。2024年に日本ヘリコバクター学会で作成した“H. pylori 感染の診断と治療のガイドライン”では、中学生でピロリ菌検査を実施し、陽性者で除菌治療をするという『test and treat』を提案している。
感染が確定された場合、胃がん発症リスクをさげるための除菌治療ができる態勢を構築する。多くの中学生は除菌治療が可能な体格であること、除菌による癌発症抑制効果は若年の方が大きいこと、次世代への伝播を防ぐために親になる前の介入が適当であること、以上のことから中学生での対応が望ましいが、それぞれの事情に応じて対策を行う。未成年者の除菌後胃がん発生については現在のところエビデンスは少なく、今後の検討が重要である。
現時点では未成年者に対する『test and treat』にはさまざまな課題が存在する。平等なピロリ菌検査と除菌治療を実現するためには施策にすることが必要であり、自治体や政府へのはたらきかけを行っていく。
コンセンサス公表時にご発言を希望され挙手をされた方で時間の関係上、会場でご発言いただけなかった先生からお話をお聞きしました。(1)主として乳幼児期に家族内で感染し(2)新たな感染は学童期以降には観察されないことの2点に同意できないとのことでした。奥田、加藤、水野から丁寧に説明を差し上げ、ご理解をいただきましたことをご報告いたします。本筋については、非常に良いことだと思って賛同しているとのご意見をいただきました。
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