会長挨拶
第49回日本造血・免疫細胞療法学会 総会
会長
矢野 真吾
東京慈恵会医科大学 腫瘍・血液内科 教授
この度、第49回日本造血・免疫細胞療法学会総会の会長を拝命いたしました。伝統ある本学会総会の舵取りを担なう機会をいただき、身の引き締まる思いです。
私が造血細胞移植医療に関わり始めたのは1991年で、それは日本骨髄バンクが設立された年でもありました。当時の移植医療は、患者さんにとってまさに荒波の中をゆく航海のようでした。ドナーの選択肢は今ほど多くなく、移植後は「GVHD」「ウイルス感染症」「真菌感染症」など様々な合併症の壁が立ちはだかり、移植関連死亡は今よりも高率でした。合併症はしばしば重篤化し、十分な治療を提供できなかった無念さを、幾度となく味わってきました。
しかし、先人たちの飽くなき探求心とCMV抗原検査の登場、新規真菌薬の誕生、HLAアリル解析の精緻化などが相俟って、移植医療が進歩していきました。これら一つひとつの積み重ねが、かつての「命がけの治療」であった造血細胞移植を「標準治療」へと昇華させてきました。
今回の開催地である横浜は、古くから外来の文化をいち早く取り入れ、日本の近代化を支えてきた「パイオニア」に富んだ街です。本大会のテーマに掲げた「未来創世」には、この街のように、これまでの伝統を重んじながらも、既存の枠組みを超えた新たな価値を創り出したいという強い願いを込めています。
本総会では、二つの視点を大切にしたいと考えています。一つは、移植医療を築き上げてきた先輩方の知恵と情熱を分かち合い、深く学ぶことです。「なぜこの治療法が生まれたのか」という歴史に学ぶことは、未来を切り拓くための揺るぎない航路図を手に入れることに他なりません。そしてもう一つは、その地図を手に、次世代の研究者と共に新たな治療体系を「創世」することです。免疫細胞療法やゲノム医療といった革新的技術を移植医療と融合させ、次の四半世紀のスタンダードをここ横浜から発信したいと考えています。
かつて多くの若者が希望を抱いて海を渡ったこの横浜の地で、ベテランの経験知と若手の創造性が交差し、移植医療の新たな夜明けを共に迎えることができれば幸いです。
皆様の積極的なご参加と、熱い議論を心よりお待ち申し上げております。