第97回 日本産業衛生学会を2024年5月22日(水)から25日(土)までの4日間、広島国際会議場及び中国新聞ビルで開催させていただきます。このような会を担当させていただくことを光栄に存じており、機会を与えていただきました多くの皆様に深く感謝申し上げます。
今回の大会テーマは、「変革期における産業保健のアイデンティティ ―サイエンスに基づく組織と労働者の両立支援―」とさせて頂きました。
労働者のはたらく環境は顕著な変革期にあります。特に我が国においては、人口減少・少子高齢化が進み、人材・働き手不足は、地域社会の維持に関わる死活的課題にもなっています。また、2019年に始まった新型コロナウイルス感染症パンデミックは、テレワークやコワーキングスペースなど働く「場」の概念や働き方そのものを多様化させています。加えて、2022年には核兵器の使用も辞さないと宣言するロシアがウクライナに軍事侵攻する事態が発生し、経済安全保障の観点に基づくサプライチェーンの再考など、これまでの平和を前提とした事業環境に著しい変化をもたらすこととなりました。
このような変革期において、労働環境の激変に晒される労働者の健康をこれからもまもっていくためには、産業保健職は従来通りの働き方をしていては、その職責を果たすことができなくなり、役割を失うことにさえなりかねません。産業保健職には、サイエンスに裏付けられたソリューションを、各組織のあり方に合わせたシステムとして組織内に実装し、組織に参加する個々の労働者をまもり、そのことを企業はもちろん自治体や病院、学校など多様な組織の活性化にもつなげる、すなわち組織と労働者の両立支援が求められています。